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2024-04

“重い扉” - 2011.09.08 Thu

 日本、アメリカ・・・その中でも最も重たい扉の一つ・・・『Jazz Club SUB』の扉。

平成に入りお洒落になるジャズクラブ。それとは無縁の昭和な空間『SUB』は小さく、暗く、愛想もない。
そこにあったのは、毎日繰り返されるジャズ愛と訓練。それを一生涯貫き通した男がこの店の主・GG西山満。
月一回のジャムセッション・・・彼一人がホストを務め、平成生まれの卵達、20代半ばから30手前の若者達に激を飛ばす。

肩がぶつかる位の40センチ角の二人掛け用テーブルが8個、カウンター6席・・・全部ガタがきている。
壁には色褪せた往年の巨匠ジャズメンの写真やジャケットが飾られ、アップライトピアノの上にはアート・ブレイキーが愛用したテンガロンハットが威厳深く鎮座する。

スタンダード曲を覚えようとしない者には特に厳しかった。
ジャズの源流、根本、基礎、初心、継続を考えない、行動に移さない者に・・・
時代なのか、幼少からの指導者・教師の嗜好に左右されたか、公共電波から垂れ流される音楽のチョイスを真剣に考えなかった親のせいか・・・客うけに即効性のある選曲、派手な曲、早弾き、早吹きに意識を集中させる若者達。時が進むにつれ、スタンダード曲に含まれる重い意味を伝えるのは益々困難になってきたと嘆いていた。

だからいつも怒ってた。
人前で叱られた事が少ない若者達はショックだ。二回目以降のジャムセッションに来なくなる者多数。1年、2年、続けて来ても、演奏内容から何も感じる事が出来なかったらさらに深く激しく叱る。多くのミュージシャンが撃沈。
撃沈した者達は『SUB』を離れ、優しく扱ってくれる店に偏って行く。

でも毎月、若者たちがやって来る・・・3~4年通う者もいる・・・
それは『SUB』が、西山氏が招聘するニューヨークの大御所達と接近できるからだ。
チャンスだ!と色めき立つ者、自分を売り込もうとする者・・・そんな事は百も承知。大切にしないといけない事を忘れなかったらOKだ。
偉大なるジャズメンが訪れる前もそうだが、GG西山氏は物凄い練習をする。その偉大なジャズメンとの演奏終了後も部屋にこもり練習する。
大志を抱いた少年のように・・・その一部になった事への感謝を込め、感動を体に浸みこませたいからだ。
ライブを見て、自己紹介できた者達はそれで満足・・・でも、次のジャムセッションでバレる。大きく叱られる。
あの時体感したはずのジャズが一音も生かされていないからだ。
何十年と継続しても中々思いが伝わらいジレンマ・・・さらに怒りは爆発する。



 『SUB』以外の関西、関東のジャズクラブセッションに参加し続けてた大我ですが、避けては通れない・・・いや、避けるべきではない・・・厳しいと言われる猛者に早いうちに放り込む・・・
その時がやってきました。大我5歳・・・小さな手でその重たい扉を開けに行きました。
実際にその扉自体が重く、「ヨイショ、ヨイショ」と何度も引っ張りながらなので、扉の鈴が大きな音で“カラン、カラン”と鳴る。
演奏中のGGは小さすぎる大我は見えてない様子・・・「静かにしろ!」と言わんばかりにGGは私(管理人B)を凝視・・・店内は満杯で物凄い緊張感に包まれている。

噂通り、70歳を迎えようとしているベーシストは吠えてました。「○○はFuckダ!」と。
政治、戦争、商業主義、音楽学校第一主義、練習しないミュージシャン、他人の褌で相撲をとるミュージシャン、お客様きどりのミュージシャン、チャージバックのシステムで偽物を多く輩出してるジャズクラブ、日本のTVを支配する低レベルの音楽・・・唾を飛ばしながら叫んでました。

  その迫力・・・“今日で大我がジャズ嫌いになってしまうかも・・・?”と脳裏を過ぎりました。

 ジャムセッション一時休憩。
「あんた楽器はなにやるの?」 「ドラムですが、この子・・・」と、大我を紹介しようとするが間髪いれず、「セッティングして!」と、満杯のミュージシャンでまだ大我に気付いてない様子。当たり前だ。
110センチにも満たない幼稚園児が、“泣く子がさらに泣く”こんなアンダーグラウンドな場所に来るわけがないのだから・・・


 「ピアノ、キミ!トランペッター、そこに座りなさい!サックスはそこに並びなさい!」とGGの指示が飛ぶ。
お店にあるボロボロのドラムセットを大我の身長に合わせようと汗だくになる私(管理人B)。
少しイライラしたGGの視線が突き刺さります。
今にも演奏が始まりそうなので、セッティングそこそこに大我を呼ぶ。
「???・・・」のGG。
「アンタじゃなくこの子がドラマー?!」「ワッハッハッ~!」
「ブルースだ!ブルースをやろう!」まだ準備が整っていない大我に関係なく「ワン、ツウー、ワン・ツウ・スリー・フォ!」
“セッションデビューしてから3ヶ月目。今日が大我最後の演奏?・・・ジャズの神様、どうかお願いします!大我が笑顔で帰還できますように!”と心底祈りました。

 演奏中のGGの顔・・・今でも忘れられません。
年齢による少し小さくなった眼を大きく見開き、「Wow! Baby! Un believable!」と叫んでる!
楽しくて楽しくてたまらない様子のGG。
演奏後、GGが吠えまくりました。
「リズムが大きい!こんな大きいリズムは日本人で初めてだよ!これなんだよ!この子は解かってるんだよ!」
そして高々と大我を抱き上げ、「日本のジャズの希望が現れたヨ!My Men!!!」って。
「お前達、これだよ!コレ! 体にジャズが入ってるんだよ・・・出てるんだよ・・・わかるだろ?!」

周りの若手ミュージシャンはポカンとしたまま。
GG西山が何を言ってるのか理解できない様子。まして、褒めちぎってるし・・・

 Fuck!には、本当に嫌な事の前に付ける“悪Fuck!”と、尊敬心からでる“良Fuck!”があります。 
その日は深夜4時までGGの“良Fuck!”が炸裂!興奮度は尋常ではありませんでした。
「後で、ハンクとソニーと○○と○○に大我ちゃんの事をメールするよ!」って。
そして、なによりも印象深かったのがGGの視線・・・大我に贈る暖かな眼差し・・・

 「大我ちゃんからみるとワシはホンマのジジイや!でもな、ジジイとは呼ばれたくない!これからワシの事は“GG”と呼んでくれ!なっ!大我ちゃん!」
「シングルストロークの練習が大事や!コール&レスポンスも!GGと一緒にいっぱい練習しようネ!」一晩で100回聞きました。

和やかに、楽しく過ごすことができた・・・帰る頃には少し軽くなってるかなと思ってた“重い扉”・・・さらに重たくなってました。
大我を真のジャズメンに育てる責任・・・覚悟を決める瞬間でした。 GG、ありがとう。


 
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